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私的・すてき人

自然豊かな滝畑で、親も子も共に育つ場を創りたい

File.140

はっぴぃプロジェクト「滝畑めぐみと森のようちえん」代表

さどう ひろのり

佐道 大倫さん [大阪府堺市在住]

公式サイト: https://www.facebook.com/takihata.nature/

プロフィール

1986年 堺市出身
2009年 大阪工業大学建築学科卒業
2011年 1年の会社勤めを経て、学童保育の現場に
2016年 「はっぴぃプロジェクト」を夫婦で起ち上げる。 現在まちづくりのコンサルタントをしながら「滝畑めぐみと森のようちえん」開園を目指す。ボランティアコーディネーション力検定2級、自然体験活動指導者、認定ワークショップデザイナー等の資格を持つ

自らに子どもが生まれた時、そのドアは開いた。
 
「豊かな自然のめぐみを感じながら、ノビノビ育てたい。自然体験のなかから可能性を引きだす、そんな子育てがしたい…」
だが現実にはそんな場所が、そうそうあるわけもない。
 
なら、子どもが大自然の中で走り回れるフィールドを、教育の場を、自分たち夫婦で造ってしまえばいいじゃないか…
 
そんな大胆な発想でエイッ!と前へ踏み出してみれば、人との出会いが追い風となって、夢は大きく動き出した。
9月からは一目ボレした和歌山の里山、滝畑で「森のようちえん」プレスクールも開講。いつかは幼稚園だけでなく「たくさんの人を巻きこんで、集落を盛り上げる大きなプロジェクトも成功させたい」と思いはドンドン広がるばかり。若き夫婦のチャレンジは、今まさに始まったばかりだ。
 
 

疑問を抱いた教育のあり方

もともとは建築家志望だった。
「建築がやりたくて大学に入ったんですけど、4年の間に建物を造るよりも、人が集う空間とか、アクティビティをデザインする方が好きなんちゃうかなと気づき始めて」
 
現在のプロジェクトにもつながるこの思いは、小学校の頃からずっと参加していた、YMCAでの体験が軸になっている。
「ボランティアリーダーとして子どもの学びや成長を、どんなプログラムで引き出すのか、自主性を育てるのかをずっと勉強してきたんです。そのなかで、人と人をつなげてコミュニティを作るとか、集う場所をデザインするってオモシロいなあと」
 
卒業後はとりあえず建築設計の仕事に就いたものの「やっぱり自分のやりたい事じゃなかった。だんだん心がしんどくなって」1年で退社。
YMCAでの経験を生かそうと、小学校の学童保育の指導員に応募した。
「子どもたちと接することで、僕の方が癒されましたね。心のリハビリっていうか、自分を取り戻せた… でも一方で、画一的ではみ出すことが許されない教育のあり方にも、ドンドン疑問がわいてきたんです」
 
ある時食育のプログラムとして、みんなでいなり寿司を作ったのだという。どの子も同じようなものを作るのに、ひとりトンデモナイお寿司を作った子がいた。
「なんかもう鬼のお面みたいな、見たこともないようなスゴイやつで(笑) でもそのお寿司を見た時『あ、コレやな!』って思ったんです。これが個性なんやと。得意なことは一人ひとり違うけど、それを見つけて認めてあげること。そうすれば子どもは自信をもって生きていけるんちゃうかなと」
 
2年後、同じ学童の指導員だった匡子さんと結婚。彼女もまた「みんな同じ」を求める教育のあり方に、疑問を抱いているひとりだった。
やがてまちづくりコンサルタントの職を得て、息子が生まれると「子どもともっと一緒にいたいなあって単純に思ったんです。仕事の時間を増やせば家計はラクになるけど、どんどん育児や家事から離れていく。それなら子育てを仕事にしたらいいんちゃう?って思ったのがひとつのきっかけだったかも」
 
 

ダッシュ村のような幼稚園

とはいっても、子どもの個性や感性をはぐくめる、自然豊かな理想郷はどこにあるのか――
夫婦であちこち探していた時、友人に紹介されたのが、和歌山にある滝畑という里山だった。市街からそう遠くないのに、文字通り大自然に囲まれ、流れる川にはホタルが舞い、カスミサンショウウオが棲む…見た瞬間「ここや!って思いました。なんてエエ場所なんやろうって」
 
しかもその土地を所有する農家の男性が、彼の思いに賛同しなんと1600平方メートルもの場所を「自由に使って」と申し出てくれたのだ。
そこには滝畑地区が抱える、過疎・高齢化という深刻な問題が潜む。なんとか若い世代を呼び込み良さを知ってほしい、活気を取り戻したいという住民の切なる願いが込められていたのだ。
 
9月には応募のあった8家族と共に、ここで栗を拾い、川で魚やカニを追いかけ、絵本を読み…と一日遊んだ。
「大人は『汚い』や、『やめなさい』をなるべく言わない。できる限り子どもの力を信じて、手出し口出しをせずに見守るのがルール。今は月に一度の親子イベントですが、来年からは少人数の預かり保育もやっていきたい。いずれ僕らも移住して、本格的に幼稚園を開園したいと思ってるんです」
 
自分たちで米や野菜を育て、収穫し料理する。木を切ってツリーハウスを作ったり、動物を育て見守る…まるでTV番組「ザ!鉄腕!DASH!!」のダッシュ村のような毎日は、子どもたちにとって都会では決して手にする事のできない、貴重な宝物になるはず。
 
さらに彼の構想はここで終わらない。
「ここでしか獲れない、おいしいお米や自然のめぐみを生かしたカフェを、小学校の廃校跡に作りたい。そこで園児のママが働けるようになれば、雇用も発生するじゃないですか。地元や役所の協力も得て、いろんな形で滝畑を盛り上げていきたいんです」
 
また匡子さんはキッズキッチンインストラクターや幼児食アドバイザーなどの資格を生かし、はっぴぃプロジェクトの一環として「レシピの無い料理教室」などのワークショップも開催。「2歳になる息子にアレルギーがあって、そこから真剣に食のことを考えるようになったんです。食育の立場からも、子どもたちにかかわっていきたい」
 
「子どもには夢を追って自由に生きていってほしい。でも親が夢を追って生きてなったら、説得力がないじゃないですか。親もハッピーに生きることこそが、大事なんじゃないかと」
 
いつか集落に子どもたちの声が響き、たくさんの家族が遊びに訪れ、自然のめぐみを共有する――そんな賑やかで活気に満ちた“新生滝畑”が誕生する日が待ち遠しい。
 
 

2016/11/5 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔