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私的・すてき人

駅を降りたらフワッとレモンの香りが漂う…泉北をそんなレモンの街に

File.155

「泉北レモンの街ストーリー」リーダー

かりや ゆか

苅谷 由佳さん [大阪府堺市在住]

公式サイト: http://lemon-organic.net/

プロフィール

1963年 堺市出身
1985年 大学卒業後、銀行に就職
2015年 「泉北レモンの街ストーリー」プロジェクトを起ち上げる
2016年 「泉北レモンフェスタvol.1」開催 パソコンのインストラクターとしても活動中

「街」は生きている。多くの人を呼びよせにぎわい、そして時代のなかでその役目を終えると、今度は“再生”という問題に直面する。
 
ここ「泉北ニュータウン」も誕生から50年が経ち、その使命を終えたかのように人口が減り、高齢者が増え、施設も老朽化。まさに今こそ“再生”の時を待っているかに見える。
 
「自宅に毎年300個の実をつける、2本のレモンの樹があるんです。これを使って魅力あふれる街にできないか…そんな思いから生まれたのがこのプロジェクト。泉北は土も気候も柑きつ類を育てるのにピッタリなんですね。だったらここをレモンの街にしようって」
 
再生という改革には、住民を巻き込んでいく大きな力と起爆剤がいる。
レモンというユニークな切り口で、街をどうデザインしていくのか、未来を変えていくのか――挑戦は始まったばかりだ。
 
 

300個のレモンに頭を抱える

「泉北に引っ越してきた時、ああなんて空が広いんだろうって思ったんです」
 
ご主人の転勤に伴って各地を転々としてきた彼女が、泉北に移り住んだのは13年前。
 
「子どもたちの学校に行っても、グランドがすごく広い。どの小、中学校もほんとにぜいたくな校舎の建てかたをしてるんですよね。緑も多くて、環境の素晴らしさにビックリしてしまったんです。こんな素敵なところがあるんだなって」
 
彼女にとって車の通らない緑道が多いのも魅力だった。
「趣味の無かった私が、初めて緑道を走ってみたいなと思ったの。四季折々の花や自然のなかを走ってると楽しくてしょうがなくて(笑)」
ジョギングの心地よさにハマった彼女は、ついにホノルルマラソンや大阪マラソンを完走するまでに。
 
こうして緑豊かな自然とふれあううちに、泉北ニュータウンが「私のなかでは日本一素晴らしい街」になっていく。
 
その一方で小さな悩みも抱えていた。それは庭にある2本のレモンの樹のこと。
「父が植えたレモンが大きく育って、毎年300個以上の実をつけるんです。レモン酒を作って、ママレードやシロップを作っても余る、あまる!とにかく使いきれないんですよ。なんとかしないと…とずっと思って暮らしてたんです」
 
 
そんな時「ニュータウンまちびらき50周年」を控えた堺市が「泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト」の市民メンバーを募集することに。
高齢化や空き家の増加などさまざまな問題があるなかで、地域住民自身が独自の発想で魅力ある街を創造しようという取り組みがスタートしたのだ。
 
それに参加した彼女は、多すぎて困り果てているレモンが「新しい街づくりのシンボルになるかも」と思いたつ。
 
「街をアピールするには、必ず特産品がいると思うんです。泉北なら絶対コレ!みたいな。だから私はここをレモンの街にしたい、レモンで特産品を作りたいとみんなにプレゼンしたんです」
 
するとそれに共感したメンバー13人が手を上げ、3年前いよいよ「泉北レモンの街ストーリー」プロジェクトがスタートすることになる。
 
 

子どもたちにも広がるレモンの輪

まず(1)レモンを育てたい人に植えてもらう (2)特産品として商品開発しビジネスとして成功させる (3)レモンの集いを開催する、という目標をかかげた。
 
「やはり自分たちで利益をあげていかなければ、続かないと思うんです。助成金に頼っていたのでは、その場限りになってしまわないとも限らない。ビジネスとして成功してこそ、自由に活動ができるんだと思う」
 
 
大阪府住宅供給公社のサポートで茶山台団地に植樹した時のこと。
「住んでいる人たちもたくさん来てくださって、一緒に植樹したんです。4ヶ月後には防寒のために布をかける作業をしたんですが、その時は泉北高校の子どもたちが参加したいといってくれて。子どもたちがアクションを起こすっていうのはスゴいこと。やがてそ

の子らが大きくなってこの街を作っていくんですものね」
 
初めての「泉北レモンフェスタ」では、個人の庭に植えてもらおうと販売したレモンの苗木に、長蛇の列が。アッという間に完売してしまい、木を植えたい、協力したいという電話やメールもしょっちゅう来るという。
 
レモンと一緒にオリジナルのプレートを500円で販売し、樹にかけてもらうことでレモンの輪を広める活動も展開中だ。
「プレートには通しナンバーがふってあるんですけど、2年半で500にもなりました。ほんとに泉北の人はあったかいなあって。たくさんの人がアクションを起こしてくれて、応援してくれる」
 
さらに昨年は無農薬レモンの美味しさを最大限に活かそうと、話し合いを重ねながらマーマレードやシロップ、フロマージュも商品化。フェスタでも売り切れ続出の人気商品になった。
 
「ただレモンは実がなるまでに3~4年はかかるので、まだまだ量が作れないんです。もっともっと樹を植えて、育てていかないと」
 
一方で、企業や行政をどれだけ巻きこんでいけるかも勝負になる。
 
「銀行やレストランに置いてくださったり、少しずつ輪は広がってるんだけど、もっとたくさんの人に知ってもらわないと。いつか駅を降りたらフワッとレモンの花の香りが漂って、レモンストリートやレモン公園が出来て、家々の庭からは可愛いレモンがのぞい

てる…そんな日が来たらいいなと」
 
レモンで街が生まれ変わる――そんな未来が待ってるとしたら、これほど楽しみな事はない。
 
 

2018/3/6 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔