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私的・すてき人

復活させた国産黒文字楊枝を、地元活性化の起爆剤に

File.156

菊水産業株式会社 専務取締役

すえのぶ あきえ

末延 秋恵さん [大阪府河内長野市在住]

公式サイト: http://kikusuisangyo.co.jp/

プロフィール

1978年 河内長野市出身
1996年 大阪教育福祉専門学校卒業
2014年 菊水産業に4代目として入社
2015年 府の地域創造ファンド「大阪商品開発」に参加
2016年 「東京ギフトショー」で国内産の自社ブランド商品を発表

強い思いを翼にして飛べば、必ず未来は見えてくる。
 
「もう一度純国産の黒文字楊枝を作りたい!」
誰もがとっくに諦めてしまっていた“メイド・イン・ジャパン”を、自分の手で復活させる――そう心に決めて走り出した。
 
クロモジというクスノキ科の原木を探してひとり日本中を歩き、なんと自ら山に入って伐りだす…という彼女の“本気”は、ついに質の高い日本製ならではの黒文字楊枝をよみがえらせる。
 
そして何より彼女が変えたのは、衰退の一途をたどっていた爪楊枝の“未来”だ。ブランド化し光をあてたことで、ここから新しい需要と夢が生まれる、歴史が始まるのだ。
 

量産で消えたクロモジの原木

幼い頃から生活のなかには、いつも自然に爪楊枝があった。
 
「両親が教師だったので忙しかったんです。だから私は、爪楊枝職人だったおじいちゃんの家によく預けられてて。黒文字楊枝の香りは、おじいちゃんの家の匂いなんです」
 
黒文字楊枝とは、お茶の席や和菓子を食べる時に使われる、木の皮を少し残した高級な楊枝のこと。
 
そのおじいちゃんが、黒文字楊枝の製造販売を創業したのが昭和35年。その頃河内長野では50件あまりの業者が軒を連ね、国内でも90パーセント以上のシェアを誇るほど地場産業として栄えていたのだという。
 
当時すべて手作業で時間がかかっていたものを短縮すべく、業界初の機械を開発したのも祖父だった。
「原木カット、分割割り、成形割、三方削りで全行程なんですが、分割割りから三方削りまでを半自動化させたことで量産できるようになったんです」
 
ただ残念ながら特許を取っていなかったため、同業者によって国内だけでなく、中国にも技術が流出。安い中国製品が輸入されるようになると、コスト競争に勝てず撤退を余儀なくされる業者が続出する。こうして国産の黒文字楊枝は河内長野から姿を消し、菊水産業も中国製のものを輸入販売する会社へと変貌していく。
 
おじいちゃん子だった彼女は高校を卒業すると、祖父母の介護のための知識を身につけたいと福祉の専門学校に進むことに。
介護福祉士の資格もとり、施設に3年務めるが結婚で退職。その後は子育てをしながら、在宅のWebデザイナーとして活動するようになっていった。
 

おじいちゃんの会社を守りたい

そんな5年前のある日、叔父でもある社長が「後継ぎもいないし、あと数年で会社をたたもうと思う…」と口にしていることを知る。
 
「会社をつぶすなんて、絶対イヤやった。じゃあ私がやる、私がおじいちゃんの会社を守る!そう決めたんです」
 
その時わいてきたのは、国産の黒文字楊枝を必ず復活させたいという思い。
 
「もう一度『国産の黒文字楊枝を作りたい』というのが、おじいちゃんの夢やったんです。さらに変色しない、安全で質の高い日本製品の復活は、お客様からの要望でもあったんですね」
 
そうと決めたら、さっそくクロモジの原木探しの旅が始まった。
地元はもちろん、京都、和歌山、岐阜、奈良、高知、島根…とリュックを背負い、クロモジを求めて探し続ける毎日。
「まず山主さんを探すところからのスタートでした。大変やったけど、たくさんの人が力になってくれて… なかには高齢化で伐り手がなくて困ってるから、好きなように伐っていいで!っていってくれる山主さんもいて(笑)」
 
こうして各地から少しずつ原木を集め、伐採を引き受けてくれる人を探し、その指導にもあたる…という地道な努力を積み重ねて、徐々に仕入れルートを確保。
 
さらに1年がかりで黒文字楊枝製造開発も行い、いよいよ今度はそれを新しいカタチの商品にしていかねばならない。そこで「おおさか地域創造ファンド」の助成金を活用した事業「大阪商品開発」に応募することに。これは府が1年かけて、再起をかけた事業者を応援するシステムで、商品開発から販路開拓までを二人三脚でサポートしてくれるというものだ。
 
こうして爪楊枝のイメージを変える、オシャレなデザインの自社ブランドが完成。
ついに誰もがやろうとしなかった“純国内産”の復活を果たしたのだ。
 
 
「黒文字楊枝だけでなく、白樺から作るこけし楊枝も地場産業でありながら、河内長野ではもううちしか作ってない。だからこれも絶対残していきたいなと思ってます」
 
次は地元でクロモジを育てて、河内長野ブランドの黒文字楊枝を作りたいと奔走中。そしてその先には「地場産業を盛りあげて活性化し、若い人たちが地元で働きたいと思えるような街にしたい」という夢がある。
 
「いろんなところと組んで、子どもたちにクロモジの苗を植えてもらうプロジェクトも進めています。まだまだやりたいことがいっぱいで、これからが楽しみでしかたないんです」
 
 

2018/4/3 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔