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私的・すてき人

いつかはあの楽団で演奏したい、そんな憧れのバンドに

File.161

「和泉市ウインドオーケストラKORUHA」団長

きんしょう ゆきお

金正 幸雄さん [大阪府和泉市在住]

公式サイト: https://izumicity-windorchestra-koruha.jimdo.com/

プロフィール

1964年 泉大津市出身
1984年 辻調理師専門学校卒業後、料理人に
2002年 生長会「ベルキッチン」起ち上げプロジェクトを担当
2017年 「和泉市ウインドオーケストラKORUHA」結成

僕らが演奏できる市民バンド作ってくれへん?――
 
生徒のそのひと言からすべてが始まった。
当時中学で吹奏楽部の指導をしていた彼は、教え子たちに「よっしゃ!まかせとけ」と胸をはる。ところが人、場所、費用、楽器…問題山積みの機体は、思ったより重くなかなか動き出すことができない。
 
「8年がかりのスタートでした。でも起ち上げてみると、もう社会人になったあの子たちが『私らのこと覚えてる?』って楽器を持って駆けつけてくれたんです。『やっと約束果たしてくれたんやな』って。こんなうれしいこと、ないですよね」
 
8年越しの夢と期待を乗せて、「和泉市ウイングオーケストラKORUHA」は空へと今、離陸したばかり。「いつかはあの楽団で演奏したい、そういってもらえるような市民に愛されるバンドに育てていきたいんです」
 
 

PTA活動から生まれた生徒との約束

我が子の信太中学入学を機に、PTA会長を頼まれたことから物語の幕は開く。
 
「その時はまったく興味なかったんですよ。なんで僕がやらなあかんのって感じで(笑) もうシブシブ引き受けたんです」
 
しかも和泉市のPTAを総括する「PTA協議会」会長職の順番までが回ってくるという、なんとも不運な?タイミング。
「ところがね、これがやってみたら意外にすごく楽しかったんですよ。今まで知らなかった人たちにもたくさん出会えて、人脈も広がってね」
 
それがきっかけとなり、彼が「泉大津市吹奏楽団」でチューバを演奏していたことから、中学の吹奏楽部の指導をしてほしいという依頼が舞い込むことになる。
「ほんとにピュアな子たちでね。演奏することが好きな生徒ばっかりで、教えるのが楽しみになるくらい」
 
 
そんなある日、市のPTAが一堂に集まって年に一度開かれる「研究大会」を会長として取り仕切ることに。
「この大会はかた苦しくて、ほんまに退屈でね(笑) もっとみんなにPTA活動に興味を持ってもらうには、なんかひとつ大きな仕掛けを作らなアカンと思ったんですよ。で、信太はもちろん和泉市の吹奏楽部の中学生を集めて、みんなで合同演奏してみたらどやろ?

って提案したんです」
 
声をかけると6中学150人の子どもたちが大集合。本番に向けて何度も練習するうちに、仲間と一緒に演奏することの楽しさや一体感が日に日にふくらんでいく。
 
そして当日、オープニングでの演奏は彼が企んだとおり拍手喝さいの大盛り上がり。
大成功のうちに本番を終えた、その時だった。
「僕ら高校に行ってもずっと吹奏楽がやりたいねん。でもその高校にはクラブが無いかもしれない。だから僕らみたいな一般の人が演奏できるバンドを、おっちゃんが作ってくれへん?」
 
こうしてストーリーは大きく動き出すことになる。
 
 

子どもたちに音楽の楽しさを伝えたい

彼の本職はプロの料理人。
 
当時「病気の人や介護が必要な人にも、おいしい食事をとってほしい」という思いから、施設や病院の食の改革に力を注いでいた。
ベルランド病院などの施設を展開する社会医療法人・生長会の「ベルキッチン」起ち上げのプロジェクトにも参加。
「病院の食事はおいしくないっていうのが常識でした。でもていねいにダシをとったり手間をかければ、旨みが全然違ってくるんですよ」
患者の“残食”が日に日に減っていくことで、成果は目に見えて現れる。それが大きなやりがいとなっていた。
 
 
PTAはもちろん演奏活動にクラブ指導も…と忙しい日々のなか、少しずつ条件をクリアし足場を固めていく。そして約束から8年、ふたりの音楽仲間と共についに「和泉市ウインドオーケストラ KORUHA」は誕生した。
KORUHAとはかつて、近代美術の父といわれた岡倉天心が、和泉市に伝わる「葛の葉伝説」をもとに書きあげたオペラに登場する白狐の名前だという。
 
 
やっと誕生したバンドだが、そうすんなり大空に飛びあがったわけではない。年齢もレベルも違うメンバーたちの間には、時に選曲への不満やコミュニケーション不足から、さまざまな衝突も起きた。
「これが生みの苦しみなんかなあと。ほんまにやっていけるかなと不安になった時もあったんです」
 
そんな危機を乗り越え、2ヶ月後に開いた初の「クリスマスコンサート」は見事に成功。「どんな苦労も吹き飛ぶほど、ハッピーそのもの!みんな、自分たちの演奏を聴いてもらえる喜びで輝いていたんです!」
 
 
「たった3人でバンドを起ち上げて、今では高校生から60代まで40人近いメンバーが集まった。でもこれはただのきっかけに過ぎません。次世代にこれをつなげていって、子どもたちに音楽の楽しさを伝えていく…音楽の輪をもっともっと広げていくことこそが僕ら

の使命だと思ってるんです」
 
演奏する楽しさ、音楽の素晴らしさを子どもたちに伝えたい――
だからこそ「子どもが一緒に歌って踊れるような、親子で楽しめる演奏会をぜひやりたい。それが僕たちの目標のひとつなんです」
 
 

2018/10/20 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔