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私的・すてき人

新しい才能を応援する、そんなギャラリーでありたい

File.165

画家、「ギャラリー ブラウカッツェ」代表

あおえ かつみ

青江 佳都美さん [大阪府富田林市在住]

公式サイト: https://gallery-blaukatze.com/

プロフィール

2003年 トールペイントに出会い、後に講師資格を取得し教室を開設
2011年 病気のため入院。退院後画家としての活動を始める
2012年 ドラード国際芸術文化連盟主催「第2回創作表現者展」奨励賞受賞
2013年 「第3回芝田町画廊公募展」大賞受賞
2017年 「ギャラリー ブラウカッツェ」をオープン

人生は何がきっかけで動き出すかわからない。
 
数年前、大病を経験したことで彼女の人生観は大きく変わる。
「人はいつ死ぬかわからないなって実感したんです。だったら自分が本当に描きたいものを描かなきゃって」
 
目覚めたように一気に画家としての活動をスタート。次々と展覧会に出品しながら、ついには画廊までオープンさせてしまう。
「魅力ある才能を育てて応援したかったし、人とひとが出会う“交差点”のような場所を作りたかったんです」
さらには新人発掘を目指し「FUKA展」と題したコンクールを創設。地域と連携してアートがある文化も根づかせたい…と思いは次々にあふれだす。
新しい才能やアート、そして文化を生み出す“拠点”として、ここからどんな風を起こすのか――この先がとても楽しみだ。
 
 

背中を押してくれた初めての受賞

トールペイントにハマったのは偶然、近所の友だちに誘われたのがきっかけだった。
「なんとなく行ってみたらこれが楽しくて。その場でビビッときて、講師の資格をとりたいとすぐさま学校に通い始めたんです」
自分の中に眠っていた「絵を描く」楽しさが、このトールペイントを通じて掘り起こされた感覚だった。
 
こうして自宅でサロンのような教室を開き、たくさんの生徒を教えていた8年前のある日、発熱などの不調が身体に現れはじめる。
「自己免疫疾患の一種だったんですが、結局3ヶ月間入院することになって。その時はじめて、人は死ぬんやなあってあらためて思ったんです。やりたいことは今、やらないとアカンなあって」
 
トールペイントはたしかに楽しかったが、もっと自分にしか表現できない何かを描いてみたい…後回しにしていた夢がフツフツと湧きあがってきた。
「その時、これからは自分が本当に好きなものだけを描こう!って決意したんです」
 
こうして退院後一気に仕上げたのが「当時の心のなかを描いた」という、白い猫がうたたねをしている「白昼夢 ゆっくりおやすみ」という題の油彩画。
この作品はドラード国際芸術文化連盟主催「第2回創作表現者展」で、見事奨励賞を受賞する。
 
「賞をもらったことで、背中を押された気がしました。美大に行ってたわけでもないし、誰かに習ったこともないから、全部自分流(笑)。でもそれでも、やっていいよ、自分の好きな絵を描いていいんだよって言ってもらえてた気がして」
 
それからは大阪はもちろん東京やベルリンなど、数々の展覧会に出品しながら個展も開催するという、精力的な活動を開始していく。
 
 

思いを込めて創設した「FUKA展」

さらに2年前には大阪狭山市駅から5分の、まだ田畑も残るのどかな住宅街に念願のギャラリーもオープンした。「ブラウカッツェ」ドイツ語で青い猫。
決して便利とはいえない場所にあるにもかかわらず、展覧会ともなると多くの人で賑わう。

「都会じゃないからこそ、ここを目指して遠いところからわざわざ来てくれる。だからゆっくり楽しんでほしいし、おいしいコーヒーを飲みながら語らってもらいたくて、バリスタの免許をとったんです(笑)」
 
「新しい才能を見つけて育てたい」と、独自の視点で創設した「FUKA展」。そこには卵が“孵化”する、そして他にはないものを見いだす“付加”価値、さらに“府下”全体を巻きこんで地域を活性化させていけるような展覧会にしたい…とたくさんの思いがつまっている。
 
一昨年開催された「第1回FUKA展」には、関西はもちろん北海道や九州、スウェーデンからも70人という応募が。グランプリは来訪者の投票プラス受賞、売約の合計得点で決まるというから、審査の仕方もなかなか面白い。
彼女自ら営業して回って獲得したという、ズラリ並ぶ企業の協賛賞の中には、一番礼儀が行き届いた作家に贈られるというユニークな賞も。
 
「芸術家だからっていってもひとりの社会人。時間を守る、ていねいな応対をする…画歴や年齢に関係なく、当たり前のことをきちんとやってほしいんです。いざという時にチャンスを逃すことにならないように」と目線はもう、子どもを見守る母親さながらだ。
 
「美術系の大学も出てない、スタートも遅い…私のような人たちは、なかなか作品を発表できるところがないんです。それを身をもって知ってるからこそ、そんな作家さんを応援したい。あと出産や子育てでブランクがある、だけどもう一度活動をしたいという作家の皆さまにも、ここからチャレンジを始めてほしいの」
 
「いつになるかわからないけど、海外に向けて日本の作家をプロデュースしていけるようになれたらいいな」――泉州の小さなギャラリーからたくさんの才能や文化が世界に発信される…そんな日が早く来るといい。
 
 

2019/4/12 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔