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HOME > 私的・すてき人一覧 > 青木 啓一さん

私的・すてき人

店はお客様が大きくしてくれる。一期一会を忘れずに

File.005

株式会社青木松風庵 代表取締役社長

青木 啓一さん [大阪府泉南郡岬町]

公式サイト: http://www.shofuan.co.jp/

プロフィール

「美味しいお菓子」と「お客様の満足」を追求しながらも、
新しい試みを続けている。

明治、大正はおろか、江戸時代以前から続く老舗も多い和菓子店。そんな中で「青木松風庵」は昭和59年創業と比較的新しい会社です。イチゴ大福を独自にアレンジした「おしゃれ」や大吟醸天野酒かすを使用した「お吟さま」など、凝ったネーミングやパッケージで新しい世界を作り出し、それでも伝統を崩さない心構えは、まさに和菓子のヌーベル・キュイジーヌ。インタビューの中にも出てきた「不易流行」の意味をふまえ、お話をお伺いしました。

和菓子店をはじめられたきっかけは?

元々は祖父が昭和二年に田尻町で創業したのがはじまりです。今でも本家筋として『御菓子司青木』の名前で営業しています。父は次男だったので分家として私と家内とで一緒に独立しました。

社名の由来は?

ご存知の通り田尻町は吉見と嘉祥寺、二つの村が一つになってできました。吉見ノ里は昔から風光明媚、白砂青松で有名なところで、新井白石も漢詩を詠い、和歌も残っています。

 

出でて見よ 吉見ノ里に秋の月
沖吹き返す 松風の声
月もよし 風も吉見の松風に
昨日も今日も 遊び暮らしつ

 

どちらにも松風という言葉が出てきます。それを活かして父親が名付けました。

常に心がけておられることは?

美味しいお菓子を作ろう、作りたいということです。別に規模を大きくする気もなかったし、お客様に喜んでもらえる美味しいお菓子を作りたかった。それだけでここまでやってきました。味や店の良い悪いはお客様が決めることだと考えています。それと「お菓子が美味しいのはわかるが、ベーシックなことばかりでは幅がでない。できれば少し離れたところで作った方がいい」と清風学園の平岡先生に言われまして。斬新なものがあるのはそれが理由です。お客様のニーズを先取りして提案型のお菓子作りをしていく。不易流行で伝統をおろそかにせず、そして新しいものを追い求めていかないと時代に取り残されてしまいます。

味に対するこだわりは?

美味しいものを作るには、材料が5割、技術が3割、気持ちが2割だと思っています。材料で言えば、ウチでは岡山の白大豆を使っています。これは普通の小豆の3倍から4倍の値段がするもので、今までで一番高かった時が60キロで24万円。その時の小豆が9万4千円。通常小豆は60キロで3万円が相場です。しかし、どれだけ原材料費が上がっても販売価格を上げるわけにはいかない。もちろん質を落とすこともできません。技術については、餡は自分のところで作っています。和菓子の業界では餡作り専門の業者から仕入れるところが多いのですが、ウチは自家製です。ただし自分のところで作ったからといって必ずしも美味しくできるとは限らない。私はずっと餡を炊いてきたし、母方も三重でお菓子屋をしているので、お菓子を作るのが当たり前になっている。業界の中でもオーナーで菓子作りの本質であり、美味しさの原点である餡の話をこれだけできるのは自分だけと自負しています。気持ちは、本当に出来たてのものを食べてもらいたいという心構えとでもいいましょうか、ウチは本当に年中無休、元旦も工場は稼動しています。そして、一日3便の配送をしています。焼き菓子なんかは日持ちがするからといっても決して作り置きをしない。事務所でお客様に出すコーヒーでも一杯一杯、その場で豆を挽いてから出す。サービスは、売る側はもちろん、作る側もお客様の顔を思い浮かべて仕事をする。店をはじめる時に家内がいった一期一会の精神ですね。出会うのは今日が最初で最後かもしれないという茶の心が大切。車で言うところの両輪でしょうか、美味しいお菓子を作り、お客様を大切にするということが一番大事だと考えています。

 

「美味しいお菓子」という言葉に確かな信念と自信を持ち、職人的な気質の影に経営者として、従業員(仲間)やその家族、地域貢献を大切にする理念を兼ね備えた青木社長。四字熟語や数字、和歌の一節にしても資料を見ず、空で語るクレバーなところも垣間見せていただき、それでも人なつっこい表情と腰の低さが印象的でした。ここ5年の増収増益、32店舗に及ぶ展開、府下で2番目の収益が当然のように感じられました。趣味は食べること。美味しいものを食べて舌を肥えさせなければ美味しいものは作れないというお考えから。そして、ご自身でも料理をなされ振舞われるとか。トップ自ら飽くなき探究心で真髄を求め、常にお客様の顔と声を意識なされている姿に感服した取材でした。

2002年6月発行フリーペーパー「キットプレス・2002年夏号」 掲載 (取材・文/歯黒猛夫)