私的・すてき人

勝ちにいく、その想いが、夢をカタチにする

File.014

「パティスリー フォンセ」オーナーシェフ

いとう けんすけ

伊藤 謙介さん [大阪府堺市在住]

公式サイト: http://www.foncer.com/

プロフィール

1973年、貝塚出身。辻学園調理技術専門学校卒業後、ホテル ニューオータニへ。
2003年「西日本洋菓子コンテスト味と技のピエスモンテ」で、日本洋菓子連合会会長賞、最優秀賞受賞。
2004年「ルクサンド グラン プレミオ」準優勝ほか、数々の賞を受賞。
2005年9月、鳳南町にケーキ屋「パティスリー フォンセ」を開く。

「ここでギアチェンジしたら、アブナイかも・・・でも、1回挑戦してみよやないか!」
ニューオオタニのシェフとして、将来はバッチリ。いってみれば料理人の“王道”を歩いていた彼が、ファーストからセカンドへ、ギアを入れ替えたのは、今から4年前。
ケーキ屋だった父の急死・・・「いつも父の背中を見て育ってきた。父が残した店を、なんとか継ぐことはできへんやろか・・・」周りは大反対。でも夢は、彼の背中をドンと押した・・・

挑戦のギアチェンジ

「とにかくヌル~イ(笑)。ホテルゆうのは、分業やしサラリーマンと一緒。そんなに頑張らんでもいいやん、みたいな。僕も、まさにそうやったんです。安定してるし、このままいけばソコソコの地位にもつける・・・。それでいいと、ずっと思てました」
だが、父の死をきっかけに、彼の中で“挑戦”の文字が、少しづつ大きくなっていく。
「ギリギリのとこまで自分を追い込んでみよ!」そう決心した伊藤さん、それからは人が変わったように、毎晩、遅くまで残っては修業、修業・・・。
翌年からは、次々コンテストに挑み「絶対、勝ちにいくで!」と、真剣勝負!
その想いのアツさは“勝ち”を呼び込み、国内外で数々の賞をもぎ取っていく。「努力すれば、必ずカタチになるんや・・・」 自信を手に、いよいよギアをトップに大加速!周りの反対をものともせず、ついに父の愛した屋号を継いで、店を開いた。

親父の背中を見てほしい

「ケーキは女の人の化粧と一緒。塗りたくるより、ベースを丁寧に。たとえば、林檎でどんなサプライズを起こせるのか。こんなに美味しい林檎のケーキもあったんやて、お客さんに思ってもらえるようなものを作らんと!」だから、飾り付けはいたってシンプル。
家に帰れば、4歳を筆頭にワンパク盛り3人の、優しいパパ。
実はここに店を構えたのには、ワケが。いつか子どもたちが通う小学校が、手の届きそうなほど近くに見えたから。「ケーキを焼いてると、いろんな子が手をふってくれて、なんかすごい嬉しい。僕の夢?父がそうやったように、子どもらに、父親が懸命に働いてる背中を見せてゆけたらなあ・・・」とニッコリ。

2006/02/01 取材・文/花井奈穂子 撮影/小田原大輔