私的・すてき人

人生はいつもチャレンジ

File.021

腹話術師

たにもと たづこ

谷本 丹津子さん [大阪府堺市在住]

公式サイト: http://homepage1.nifty.com/t-tazuko/

プロフィール

1946年岡山県津山市出身
京都女子大児童学科を卒業後、結婚して堺へ。
40歳の時腹話術に目覚め、日本人としてただ1人、アメリカでの「世界大会」10年連続出場。
世界のプロからの評価も高い

「チャレンジの無い人生なんて、面白くないねん!」
という彼女の芸は、大阪弁満載のまさに“ナニワの腹話術”。
そのボケとツッコミを手に軽々と世界に飛び出し、高~いハードルを飛び越えようと頑張るオバチャンは、そうはいない。世界大会チャレンジ10年、ついに会場にはスタンディング オベーションが巻き起こった。

娘を笑わせたくて

「ねえ、お薬のもうよ!」ぬいぐるみが話しかけると、「うん」とうなずく娘。病気で40日間も入院している2歳の娘を、「なんとか楽しませたい」と必死だった谷本さんが思いついたのが“腹話術”。「私がいってもきかないのに、人形がいうと素直にうなずく。ああ、腹話術ってスゴイんやなって・・・」

以来、腹話術はいつも心に引っかかっていたものの、もともと幼稚園の先生だったほどの子ども好き。3人の子どもたちと一緒にいるのが楽しくて楽しくて、いつしか子育てオンリーの毎日に。だが「アカン、このままじゃ子離れできなくなる・・・。自分の夢をスタートさせなくちゃ」とやっと腰をあげたのが40歳の時だった。
堺市で回ってない小学校は無い、というくらいあちこちから引っ張りダコ。幼稚園、老人施設・・・相棒の人形ショウちゃんを連れて、駆け回る毎日。だが、心の中でだんだん大きくなってゆく「ほんまにこんなんでいいの?」という疑問。そんな時知ったのが、アメリカ、ケンタッキーで行われている世界大会だった。

リュックひとつで乗り込んだ世界大会

「絶対行ってみたい!」矢もたてもたまらなくなった谷本さん、大阪のアメリカ領事館に駆け込み、場所や情報を入手。「英語もできへん、場所もわからん」ヤル気だけでリュックをかついでイザ出発! 不安でいっぱい、なんとか会場にたどりつくとそこでは世界各国から訪れた400人のプロが、信じられないような芸を繰り広げていた。
「スゴイ・・・」日本の、いわば話芸だけにたよる腹話術とはまったく違う、人形を人間の筋肉と同じように動かす技術。そして、時にどちらが人かわからなくなるほどのパフォーマンスにもうア然。
「とにかくチャレンジ!」と、翌年からさっそく大会に参加することに。世界のトップの芸を盗みながら、英会話教室にも通い大奮闘。そして挑戦すること10年目、マイケルジャクソンのダンスを取り入れたユニークな舞台に、なんと会場は総立ちで拍手、拍手。
「やったぁ~!てカンジ。自分がいとしくなるくらい嬉しかった!」

この夏には20年の足跡を修めたDVDも発売。「日本には無い、アクションのある芸をやりたい。動きが面白ければ言葉も年齢も関係ないんです。子どもからお年寄りまで笑ってもらえる、そんな腹話術を目指したい」来年の大会に向けて早くも構想を練る毎日、とにかく上へ上へレッツ チャレンジ!

2006/10/05 取材・文/花井奈穂子 撮影/小田原大輔