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私的・すてき人

あの子たちとの“約束” それが走り続ける原動力

File.035

「NPO法人 青少年育成審議会JSI」代表

よしむら うさぎ

吉村 憂希さん

公式サイト: http://www.usagiwork.com/

プロフィール

1985年 青少年の自立支援のための草の根活動を開始。純粋な民間団体として、様々な問題を抱える子どもたちの自立支援を行い、10年間フリースクールを展開。若者のチカラを伸ばすスペシャリストとして、市民力を生かしつつ、多方面にわたる次世代育成活動を展開中。
2000年 様々なジャンルのメンバーの賛同を得てNPO法人を結成、現在は、子育て支援から青少年育成、災害救援まで、幅広い分野にわたって活動中。 

若者たちから絶大な信頼をこめて「ウサギさん」と呼ばれる“アネゴ”。
どれだけの子どもたちが彼女に心のドアを開き、新しいスタートを切っただろう。
そして震災の現場では、ボランティアとして、被災者の立ち直りの力になってきただろう。
ボロボロになりながらも“誰かのため”に走り続ける、その原動力はいったい何なのか……。

コンビニでの出会いが運命を変えた

「だって、あのコたちと約束したから…」それが彼女の答え。
22年前、仕事帰りに毎日通っていたコンビニ。そこにはいつの間にか学校や家庭、地域に目を向けず、居場所を探す子どもたちが集まりだしていた。
いわゆるその当時“ワル”のレッテルを貼られている子どもたち。
コンビニがちょうど登場した時代――まるで24時間光るその箱に惹かれるように、たくさんの子どもがタマッていた。「今日は何してたん?」「何かあったん?」と何気なく声をかけていた彼女に「いつからかなあ、向こうから、心の扉を開いてくれるようになったんです」

そのうち彼女と話がしたくて、毎晩たくさんの子どもたちが集まってくるように。だが、次第にその数は増え周囲から非難の目が向けられるようになる。
「ここが無くなったら、俺らはどこ行けてゆうんや?大人なんかあてにならん、先生かって話聞いてくれへん。みんなどうしたらエエねん…」
その言葉に胸をつかれて思わず“いってしまった”のが「じゃあ、私があんたらの居場所をつくってみるわ!!」というひと言。そこから思わぬ人生が幕を開けたのだ。

彼らとの“約束”を守るため、友人や仲間と大阪・泉州のラーメン屋を借りて24時間体制で無料のフリースクールを始めた。といっても借金を抱えてのまるで見通しの無いスタート。どこからの支援も補助もない、ましてやフリースクールそのものが知られない時代に、自らスクールの傍ら店で働き、とにかく寝る間も休みも無い毎日が始まった。

いつも直球勝負!

「何があっても理屈で逃げへんし、イエスとノーをはっきりいう人」「とことん話を聞いてくれる人」……大人をナメて信用しない子どもらが、彼女にだけは正直に相談にきて、朝まででも話し続けた。
悩みや心の病を持ったコ、暴力をふるうコ、ハンディを抱えたコ…いっさい線引きをせずに、どんな子も受け入れた。
一貫して教えたのは「まずあいさつと返事。これができないと社会では通用しない」

「いまさら学校に行く金を出してくれヘン。けど昼働いて夜学校に行くのはシンドイ…」という子たちもいた。「じゃあ私がここに学校をつくったら、絶対に卒業するまで頑張るんやね!よしやってみる!」
当時では珍しかった通信制教育の姉妹校として認めてもらえるよう走り回り、きちんと高校卒業資格がとれるスクールにしてみせた。ここから多くの生徒が、ユニークな“生きるための授業”を受けて巣立っていく。

“ワル”を気取ってるコには「ほんまのカッコエエがどんなことかわかる?」
なんとビックリ、彼らは数年後ボランティアの隊長にまで変身! お金ではなく、人に感謝されることがどんなに素晴らしいかをそれぞれが体験して社会に出ていった。
「やれるかどうかわからないんだったら、やってみるしかない!」という根性と、まっすぐガチンコで向き合う姿勢は、たくさんの子どもの人生に「出来た!やれた!」という感動の光をともしていった。

青少年育成だけでなく、地震や災害が起こるたびに、救援のボランティアとしても被災地を駆け回る。さらに各種ボランティア養成講座で、多くの人に「自己満足や親切の安売りではない、本当の支援」について講演も。地域の子育てサポートルーム開設のさきがけとなり、親子の仲間づくりや子育てを後押し。大学でも「人間力向上プログラムの講義」を受け持ち…と、とにかく八面六臂の活躍ぶり。それが目にとまり、今は大阪府教育審議会などの委員も務める。
立ち退きでスクールが無くなった今も、当時の子どもたちからしょっちゅう相談や連絡メールが入る。メンバーは評して「直球しか知らない人。ちょっとはカーブも覚えてもらわんと…」と苦笑い。

でもこの“直球”こそが、彼女の魅力。
「今の子は、ケータイやインターネットが無かった昔とは全く違う。大人を無視して関わろうとしない。時代に合わせたこころと道徳教育、それを自治体のレベルで見直していかなイカンと思っています」。そろそろ自分の幸せも考えんと、というメンバーの声もどこ吹く風、“アネゴ”はまだまだ走り続けるらしい。

2007/11/16 取材・文/花井奈穂子 撮影/小田原大輔