私的・すてき人

アイデアは、いつも時代の半歩先をゆく

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ラジオパーソナリティ 地域観光プロデューサー

さわだ しょういち

澤田 昭一さん [大阪府貝塚市在住]

公式サイト:

プロフィール

高知県出身。大学卒業後、システムエンジニア、コピーライター、デザイナー…とマルチな分野で活躍。
近年は(財)大阪観光コンベンション協会の情報発信チーム部長、国交省プロジェクト「外国人が楽しめる街・大阪」の座長等を兼任。
泉州JOLLY FMで番組「チアラの冒険小学校」のパーソナリティもつとめる。

いつも「時代の半歩先をゆく!」がモットー。
プロフィールにはシステムエンジニア、作編曲家、コピーライター、イベントプロデューサー、キーボードプレーヤー…と流行りのカタカナがズラズラ並んでいる。
いったいゼンタイ、彼は何モノ!?
「いやいや、普通のオッチャンです」て笑うけど、差し出された名刺には江戸の奇才、平賀源内のイラストが……。源内といえばコピーライターで浄瑠璃作家、洋画も描けばあのエレキテルや寒暖計も発明、今でいうCMソングまで作ったマルチな先駆者。もしかしてこの人、泉州の源内!?
とにかくお茶の水博士みたいな髪型だけでも、もう十分なインパクト。ほんまに何モンなんやろこの人・・・!?

ヒラメキが上からおりてくる

子どものころから型にはまるのは大嫌い。写生をしろといわれれば、一面青く塗りつぶす。楽器を弾けといわれれば、譜面どおりに弾かないくせにデキがいい「ぶっとんでた小学生だった」らしい。

大学進学をきっかけに東京へ。日立でシステムエンジニアとして働いている頃、ちょうど日本中が沸いた「大阪万博」が幕を開けた。ここの「日立館」に派遣されていた彼は、たまたま園内のパビリオンで演奏されていたコンピュータミュージックに衝撃を受ける。
「これは面白い!これからはコンピュータで音楽を作る時代が来る!」そうひらめくや、あっさり会社を辞めてなんとヤマハの門をたたく。もともと楽器が得意だったこともあって、先生らの指導をしながらジャズキーボードや今でいうテクノミュージックの勉強を始めることに。

ここからが、いよいよ本番!その多才ぶりが一気に正体を現す。
ヤマハで作曲や演奏をするうち、広告代理店から声がかかる。さらにテレビCMを作ってみないかと誘われるまま、制作や絵コンテを描く。すると今度は新聞のコピーを書いてくれという話が。次は大阪城ホールでのイベントプロデューサーをやってくれと声がかかる……とまあ、まるで強い磁力にひかれるように仕事が集まり、またそれがチャンスを呼ぶマルチ人生が始まったのだ。

すべては「時代の半歩先を読む」アイデアと天性の創造力。
「フッと上からおりてくるんやね。ヒラメキが霊みたいに……。それを発酵させて、空気を抜いて、よしこれでイコってなる」

地震をきっかけに生まれたワールド

こうして人の何倍もの肩書きと、多様な仕事をこなしていた1995年、彼にまた新たなヒラメキが降りてくる。きっかけは5万人近くもの死傷者を出した「阪神・淡路大震災」。
「家族の安否を問う各地からのFAX通信の山を見た時、思ったんです。地方をつなぐネットワークを造ったらどうかって」

翌年、神戸新聞、高知新聞など18社を結んでの「ふるさとサイバーワールド」を、ネット上に開設する。地方新聞同士が連携し情報を発信する、当時としては画期的ともいえるサイトを立ち上げたのだ。数年後には各地の人気商品のネット通販もスタート。「中高年になると、なんか自分の故郷が懐かしくなるんですよ。地方でどんなニュースがあったんやろとか、パッと見られるサイトあったらいいでしょ」
今ではさらに共同通信とサンケイ新聞、地方紙33社が新たに加わり47都道府県53社でニュースを配信する「47NEWS」に名を変えさらに発展、同時に地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」も運営されている。

最近では、(財)大阪観光コンベンション協会の情報発信チームとしてネット上で学べる「外国人観光客対応マニュアル」も作った。戎橋・心斎橋筋といった商店街に中国語、韓国語などでの対応を指導し、もっと気軽にアジアの観光客を呼ぼうというアイデア。
またパーソナリティをつとめるFMラジオ「チアラの冒険小学校」では、中高年に向けて「あきらめてしまった夢にもう一度チャレンジしてみませんか」のメッセージも発信する。

さて、これから時代はどこへ?
「これからは農業です。これだけ食が崩壊したら、もう国には頼れない。自分の食、自分の身は自分で守る時代になったんだと。今いちばん農業がやりたいね、これからは名刺にファーマーの肩書きも入れんと(笑)」

時代の遥か先を行き過ぎた源内は、結局万人に理解されることなく終わる。
社会を巻き込むコツはそう、“半歩”なのだ。
「半歩時代の先を行く」これこそが彼の真骨頂。これからもでっかい遊びをクリエイトして、私たちをアッといわせてくれるのだろう。

2008/09/27 取材・文/花井奈穂子 撮影/小田原大輔