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私的・すてき人

子どもの背中をそっと押してあげられる、そんな童話を

File.053

童話作家

さわだとしこ

沢田 俊子さん [大阪府堺市在住]

公式サイト: http://www.tombo-road.jp/

プロフィール

1943年 京都府出身
1969年 結婚のため電通を退社
1996年 48歳で童話を書き始め、投稿から生まれた作品「モモイロハートそのこリュウ」を出版
2004年 「盲導犬不合格物語」でサンケイ児童出版文化賞受賞  日本児童文芸家協会理事 堺、広島、福山で童話教室主宰

アラフォーだって、アラカン(還暦)だってなんのなんの、サプライズはどこに待っているかわからない。その気になれば夢の扉は開く、人生捨てたもんじゃないのだ―

なんと48歳で童話を書き始め、53歳でデビュー。10年あまりで20冊もの単行本を世に送り出し、フツーのオバチャンから作家に大変身してしまった、まさにドリームウーマンがこの人。
「今見えてるものなんて氷山の一角、誰だって才能は山のように眠ってるはず。夢は叶わないんじゃない、叶えようとしないだけ。どこで何が起こるかわからない、人生ってオモシロイんだから!」

いいお母さんになりたくて

「私は創作の“井戸”を、おじいさんからもらったの。そのおかげでポンプで汲めば汲むほど、どんどんアイデアが湧いてくる・・・」

幼い頃毎日のように、祖父の膝の上でワクワクしながら聞いた昔ばなし。それは彼女の心に想像力のタネを植え、やがて40年もの時を超えて芽を出し、大きな花を咲かせることになる。「童話を書き始めて、思ってもみなかった歯車が回りだした。ほんとに人生って不思議…」

もともとは、娘を寝かしつける時の“魔法”として使っていた「思いつきのオモシロ話」。
「なにせ結婚して8年目にできた娘。体力的にクタクタで、絵本を読んであげるどころかこっちが先に寝てしまう毎日。『私っていいお母さんじゃないんかも?』ってヘコんでた時思いついたのが、即席の創作ばなしだったの。しゃべるだけやったら簡単やし・・・とやってみたら意外と好評で・・・まあ、口からでまかせのテキトーな話ばっかりなんやけど(笑)」

このいくらでも湧いてくる「オモシロ話」こそが、まさに作家の命。
とはいえ、その眠れる才能を発揮するチャンスなんてなかなか巡ってこない。たまたま新聞で見つけた「童話教室」の広告に「あっ、コレや!」とひらめいたのは、なんとそれから10年も後のことだった。

スタートこそちょっと、いやかなり遅かったものの、それからの快進撃は並みじゃない。アイロンをかけてる時、コタツの布団をのぞいた瞬間、次々思いつくお話のタネ…「いくら素晴らしい“井戸”があっても、汲むための訓練をしないと水は手に入らない。いつもアンテナを張っておく、そうすればいくらでもアイデアは生まれてくるものなの」

読み終えたら人生に光が射し込む、それが童話の力

「なんやのん、これ!?」それが童話教室に通い出しての第一声。
「ちっともメルヘンじゃない、こんなん童話じゃないやんって。でもそれこそが今私が書いている“生活童話”だったんですね。こんなハズじゃない、こんなんおかしい・・・って思ったからこそ、もうちょっとやってみよって続いたんやと思うの。まあ、結婚とおなじやね(笑)」

それからというもの公募ガイドを見ては、片っぱしから童話を書いて投稿する毎日が始まる。「だって原稿用紙たった5枚書いて、入選すればヤル気になるし賞金ももらえる。こんなイイ話ない」と、尽きぬ想像力をフル回転させて書いた作品はなんと200作あまり。
そしてそのひとつ「モモイロハートそのこリュウ」が、恐竜文化大賞を受賞しついに出版にこぎつける。「50にして天命を知る」というけれど、まさに53歳にしてオンリーワンの道を見つけ、作家として歩き出すことになったのだ。

「今65歳で、65の階段をあがってみるとここからしか見えない景色があるの。でも10歳の子どもの場所まで降りていくと、それが見えない。だから私が伝えたい大事なことを、やさしい言葉やユーモアでくるんで体験させてあげる、それが童話だと。一冊読み終えたらその子が成長してる、人生に光が射し込んでる、それが童話の力だと思うんです」

代表作「盲導犬不合格物語」では盲導犬になれなかった、でも輝く命を精いっぱい生きている犬の姿を、子どもたちへの想いをこめて描いた。
「不合格イコール落ちこぼれ、ていうイメージがあるけど全然そうじゃない。たまたま盲導犬には向いてなかったってだけ。人間だって同じで、いろんな個性があるから面白い。私はいつも『キミのままでいいんだよ』というメッセージを送りたいの。子どもの背中をそっと押してあげる、そんなお話が書きたい。そして命や家族は何より大事なんだってことを伝えていきたいんです」
夢は「生涯現役!」という彼女、これから先もまだまだサプライズを見せてくれるのかもしれない。

2009/06/04 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔