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私的・すてき人

堺を生んだ環濠の魅力、船の上から伝えたい

File.062

NPO法人「観濠クルーズSakai」 代表

たかすぎ すすむ

高杉 晋さん [大阪府堺市在住]

公式サイト: http://www.kc-sakai.com/

プロフィール

1965年 堺市出身
1989年 大阪芸大音楽学科卒業
1990年 「bar CLASSICAL」開店
2006年 NPO法人「観濠クルーズ Sakai」設立

「行政には任せておけん、僕らの街は僕らの手で変えていかんと!」そんなパワーが、ここ泉州にはあふれている。
市民ならではの目線とユニークな発想で、次々と生まれるNPOや活動団体――資金こそ無いもののアツイ思いや夢がつまっている分、そこには時に思いもよらないビッグな“化学反応”が起きる。

堺駅前を流れる約4.7キロの内川・土居川。ゴミだらけ、ヘドロで悪臭が漂うこのドブ川に、なんと“カヌー”を浮かべてゴミ拾いをしようと思いついたのがこの人。
「僕の目の前にある川をなんとかきれいにしたかった、初めはただそれだけやったんです」

だが、彼の思いは地元に“化学反応”を起こし、いつしか「この川に観光船を走らせたろやないか」というでっかいプロジェクトに向けて、行政も住民もひとつになって走り出すことになる。

「誰かがアクションを起こせばきっと何かが変わる。一歩踏み出せば夢に近づく。今ならそう思えるんです」

カヌーから始まった都市再生

かつて“東洋のベニス”とうたわれ、自由貿易都市として栄えた町、堺。その「黄金の日々」を支えたのがこの内川・土居川を初めとする「環濠」だった。
もともと戦乱から町を守るために、人工的に作った堀がこの環濠。四方を水で囲まれた環濠都市を築いたことで、大名からの支配を逃れ、町衆の自治による独自の文化が生まれたのだと聞いてちょっとビックリ。

もともと奈良の吉野などに通っては、カヌーで川を下るのが趣味。
「キレイな川で遊びたいから、いつもゴミを拾って帰ってたんです。来た時よりも美しくってやつです。でもふと思ったんですよね、僕のすぐ目の前にドブ川がある。まずこの川をキレイにするのが先ちゃうんかって。で、せっかく船あるんやから、カヌーでゴミ拾いしよやないかて思いついた」

その日からカヌー仲間とふたり、週1回のゴミ拾いを始める。
とはいえ、そんな先の見えない、気の遠くなるようなボランティア、すぐに投げ出したくなりそうなもの。「それがなんか楽しかったんですよ。僕ら変わってるんかも(笑)」
それから1年、少しでも街の人にアピールしようと、朝の通勤時間に合わせてコツコツ活動するうち、堺駅前商店会や青年会から「協力したい」との声があがるようになる。

さらにどこで聞いたのか、市役所の河川水路課からも「拾ったゴミの処理は市に任せてほしい」という思わぬエールが舞い込む。そうこうするうちに今度は「川をキレイにするためのイベントをやろやないか」という企画も持ち込まれ、「内川・土居川まつり」が実現。まさに地元も行政も巻き込んでの“化学反応”が起きた瞬間だった。

夢はでっかく、環濠都市再生

住民に“ドブ川”と呼ばれ疎まれていた場所は、ほんの数年で大変身。澄んだ川底に魚が泳ぎ、川辺にはサギが集うまでに姿を変えた。

水がきれいになるにつれ、今度はこの川で楽しみたい、遊びたいという声が上がりはじめる。「内川・土居川まつり」でも人気は「カヌー体験」や船から堺の町を見てみようという「船上ウォッチング」。
それなら祭りの時だけじゃなく、この川に船を運航してたくさんの人に堺の魅力を伝えられないか・・・・・・彼のなかでその思いがどんどんふくらみ始めたある日、メンバーのひとりから「船を寄贈してもいい」という電話が。文字どおり“渡りに船”――「うれしい!絶対やります!って即答でした」

メンバーには元小学校の校長や税理士、橋梁の技師・・・と様々な経歴の持ち主が集結し、それぞれの“特技”をめいっぱい生かして、山のような申請書類やら役所との交渉も次々クリア。さらに「お客をつかむにはしゃべくりや」と元バスガイドの主婦まで口説き落とし、船頭修業に、名所案内の練習・・・とてんやわんやのうちに初の「お花見クルージング」が開催される。
両岸に咲き乱れる桜、チンチン電車や堺港・・・「これがほんとにあのドブ川?!」「桜を川から見られるなんて思っても見なかった・・・」約50分のクルージング中に次々起こる感動の声。「それを聞いてもう感無量…ほんとにやって良かったなと」

昨年は2800人の乗客を動員、子どもたちに堺の歴史や環境の大切さを伝えたいと小学生を招待したり、堺の物知りクイズを散りばめた「sakai検定」をスタートさせ・・・と活動は広がるばかり。
さらに彼には今、もっと大きな夢が・・・「実は、環濠都市を再生したいんです。阪神高速の建設で埋められてしまった土居川を掘り起こして、かつての堺の姿を取り戻せたら・・・」

思えばゴミ拾いから始まった小さな活動は、川を変え、人を変え、やがて地元を巻き込んでの大きな夢へとつながっていった。ひとつのアクションが何かを変える、まさにそこにあるのは“チェンジ”。次はどんなチェンジが待っているのか、私たちにどんな夢を見せてくれるのか・・・・・・堺衆の心意気、本当に楽しみだ。

2010/02/05 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔