私的・すてき人

作品が出来あがった瞬間、みんなの顔がパァッと明るくなる。
それを見るのがいちばんの幸せ

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「Mille Fleur(ミルフルール)」主宰 1級フラワーデザイナー

かえつ じゅん

嘉悦 純さん [大阪府和泉市在住]

公式サイト: http://ameblo.jp/flower-design-osaka/

プロフィール

1968年 堺市出身
1988年 金蘭短期大学卒業後、フラワーアレンジメントに出会う
1994年 NFD (日本フラワーデザイナー協会)1級、講師取得
2002年 自宅で教室「Mille Fleur」をスタートさせる

「大スキ!」を仕事にできたら、人生はガゼン楽しくなる。

 

彼女のように主婦してたって、子どもがいたって強い思いがあれば、夢に手が届く。人生に遅すぎるなんてことは無いのだ。

 

「私にとって花はなくてはならないもの。生きている花のパワーをもらうと、自分が元気になっていく、豊かになっていくのがわかるんです」

 

趣味で始めた生花のアレンジメント。それがやがて自分を表現する道となり、気づけば花を自在に魅せることが“仕事”になった。

 

「もちろん、趣味でやるのもいい。でもいつか講師になりたいという人には、資格を取るためのレッスンをするし、その先も出来る限りバックアップしたいの」 自分と同じように、好きをいつか仕事にしてほしい…そのために道を開くのも、自分の使命だと思い始めている。

 

クリスマスリースから始まった夢

友だちに誘われて、なんとなく訪れた生花のアレンジメントスクール。それがこの世界に入るキッカケだった。

 

「OLを初めてすぐだったんです。まったく残業の無いヒマな部署で…仕事帰りにフラワーアレンジメントでもやってみようか、ぐらいのノリだったんだけど、これがハマってしまって(笑)」

 

それからは毎週スクールに通いながら、フラワーデザイナーの資格試験にも挑戦。膨大なカリキュラムをこなしながら4年かけて講師の資格を取った。

 

だが、その時はまだこれといった目標もないまま結婚することに。 普通の主婦として過ごしていたある日、「もうすぐクリスマスだから、何か飾ろう」とクリスマスリースを作ることを思いつく。玄関ドアにかけてみると、たちまち「これどこで買ったの?」とマンションの住人たちから声がかかった。

 

「それでなんとなく教え始めて…子どもができるまでの間10人くらいの方に、アレンジメントを教えてました」

 

その後和泉市に引っ越して来た時にも、またもや同じように彼女の作品を見て「こんなの作ってみたい、教えて!」と声がかかり、自宅でレッスンをスタートさせることになる。

 

「下の子がまだ2歳だったにもかかわらず、やってみようって思えたのは、周りの人が押し上げてくれたからだと思うんです。みんなのおかげで一歩足を踏み出すと、自然と夢が見えてきた…」

 

そうおっとり話す彼女だが、そこからは5000枚のチラシを作るなどして奔走。自分の足で一軒ずつポスティングするなどの“企業努力”の結果、新たに40人の生徒が彼女のスクールに入学したのだ。

 

もっと暮らしの中に花が息づいてほしい

作品には性格や個性がそのまま現れるというが、彼女のアレンジメントはどれも白や淡いピンクといったメロウカラーの花たちが主役。そのフワッと優しい雰囲気や温かさが女性のハートをつかむのか、クリスマスリース制作などの季節レッスンを開催すると、アッという間に連日満員になるほどの人気だ。

 

「アレンジが出来上がった瞬間、生徒さんたちの顔がパアッと明るくなるねんね。その嬉しそうな顔を見る時が、いちばんの幸せ!生活のなかではきっと、嫌なことやシンドイこともあると思うけど、そんな事忘れてしまうくらい、うるおってもらえたらいいなと」

 

さらに彼女の強みは生花だけでなく、流行に合わせてどんなフラワーアートに も挑戦していく柔軟さにある。 生きたままの姿を長期間楽しめるプリザーブドフラワー、さらに今人気の造花アートであるアーティフィシャルフラワーなどの資格を次々とり、相手のリクエストに合わせてどんなパスも繰り出せるよう、日々技術を磨く。

 

最近はショッピングモールでのイベントを任されたり、介護施設でお年寄りのためのレッスンも行うなど、外へ出ていくことも多くなった。 「次はいつ来てくれるの?今日は楽しかったって喜んでくれると、こちらが元気をもらえるんです」

 

数年前からは、夢を持つ人がそれをカタチにできるように、資格取得のためのレッスンにも力を注いでいる。 「少しずつ合格者も出てきました。目標があるならそれを叶えられる道を作りたい。そこには責任がありますから、試験対策はもちろん、講習会やイベントにも連れていって練習の場を作ってます。彼女たちのサポートをしながら、また一緒に何か楽しいイベントができたら最高だなあと思って…」

 

そして彼女のなかには、もうひとつ変わらぬ思いがある。 花がもっと生活のなかに溶け込んでほしい、あたりまえのように暮らしの中に息づいてほしいということだ。

 

「月に一回教室に来てアレンジメントを作って帰る。それもいいけれど、一週間くらいで枯れちゃうでしょ?だから自分でお花屋さんに行って、今日はこの花でこんなブーケを作ってみようとか、そういう風に楽しんでほしいの。習うだけじゃなくて、それを家で自分らしくアレンジする…そうすれば自分も家族も、花のある豊かな暮らしができると思うから」

<2013/11/05 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔>